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2012.9.14
プロジェクト計画段階におけるスコープ定義の重要性

放射線部門を中心とする医療ITは、DICOMに準拠したシステムをいち早く手がけた弊社をはじめとして、検査装置系ベンダー、フィルム系ベンダー、独立系ベンダーなど様々なベンダーがシステムを提供し、早20年近くなろうとしている。しかし、ここにきて業界の様相は少しずつ変わり始めている。

医療ITはやっぱりもうからない。やればやるほど人を投入してコストがかかり、利益を食いつぶす。だから難しい要求を出すお客様の層からは手を引き、本業の検査装置のセールスに集中したり、シェアを拡大する目的で闇雲に安い見積を提出する機会が少なくなるなど、他社の動きに変化がみられる。医療に限らずIT業界では、サーバーなどハードウエアの単体売りのビジネスに比べて利益率は低く、営業利益ベースでは5〜7%程度がせいぜいでないだろうか。そして、億を超える比較的大きめのプロジェクトに失敗すると、簡単にその利益が吹っ飛んでしまう。
どうして医療ITは利益が出しにくいのだろうか。

前回のコラムでは、PMBOK GUIDEの立上げプロセス群に触れたが、今回は計画プロセス群のベースにあるスコープ定義に拘ってみたい。計画プロセスは5つのプロセス群のなかでもかなりボリュームがある部分で、各知識エリアに計画プロセス群に纏わるアクティビティが存在する。

計画プロセス群における各知識エリアのアクティビティ:
  • プロジェクト統合マネジメント:プロジェクト計画
  • プロジェクト・スコープ・マネジメント:スコープ定義等
  • プロジェクト・タイム・マネジメント:スケジュール作成等
  • プロジェクト品質マネジメント:品質計画書作成
  • プロジェクト人的資源マネジメント:人的資源計画
  • プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント:コミュニケーション計画
  • プロジェクト・リスク・マネジメント:リスク対応計画等
  • プロジェクト調達マネジメント:調達計画

医療ITビジネスは、医療機器とそのオプションを売るのとは異なり、ユーザーの要求事項を整理し、スコープを確定する作業が伴う。もちろん最初から入札仕様書などユーザーから要求仕様が提出される場合もあるが、その行間から読み取れる事項を受注範囲とするか、文字に書いてある字図らの機能のみを満たすかで、システム構築のコスト(アプリケーション変更費用と、それに伴うエンジニアリング費用)が大きく異なるのも事実である。行間も含めて読み取ればユーザーからの満足度は上がるものの、それらを実現するコスト増など企業側にとってのインパクトは大きい。こうした悩みは、何よりも契約を優先する外資系企業には理解できないのではないだろうか。

計画フェーズにおけるスコープ定義のアクティビティは、受注時にとりきめた範囲と行間に含まれたふわふわとした、ユーザーの期待感ある仕様をふくめて、ユーザーの要求事項とベンダーから提供できる実現系のギャップを埋める大切な作業なのである。システム構築の初期の段階でスコープを曖昧にしたままプロジェクトの終盤を迎えると、容易に悲惨な結果が想像できる。ユーザーから見れば、高い費用をかけて購入したつもりが、思ったものと違うものが出来上がり、企業にとってはお客様の満足は得られたが、追加改造によりコストが悪化したということになってしまうのである。
こうした問題を避けるためにも、その後のアクティビティであるWBS作成やスケジュール作成、品質計画、人的資源計画、リスク対応、調達計画のすべてに影響を与えるスコープ定義は、プロジェクトの成否を左右する重要な要素としてユーザー理解に裏付けされたものであるべきである。

PMBOK GUIDEからは読み取りにくいが、スコープ定義はプロジェクト計画フェーズだけで実施されるものではない。受注前の段階でも、プロジェクト計画プロセス群のアクティビティは、一通り実施する必要があり、そのギャップを埋める精度こそが肝である。

私達は装置系ベンダーのような利益構造を持たない医療ITの専門ベンダーである。顧客満足を得ながらこのビジネスモデルの中で事業継続していくには、早い段階でユーザーの要求仕様の行間を読みつつ、双方の要求のギャップを明確にし、ユーザーに納得していただけるシステム構築を積み重ねていくことが大事だと考えている。これからも、信頼できるベンダーとして認めていただけるよう、努力していきたい。