技術レポート選択メニューに戻る

パーソナルディジタルオシロスコープDL1540

Personal Digital Oscilloscope DL1540

                         金子 洋(*1)  川崎 秀樹(*1)  
                         相川 誠(*1)  薬袋 正和(*1)  
                         水澤 孝昭(*1)  

                         (*1) メジャメント事業部 技術部

Abstract

フルレンジ4チャネル入力、最高サンプルレートが200MS/s、帯域150MHzのディジタルオシロスコープを開発した。入力アンプICの開発、薄型電源の採用、一体成形アルミフレームの採用などにより従来機種DL1200/1300と比較して小型/軽量化/高性能化をより一層すすめた汎用型オシロスコープである。 本稿ではその概要を報告する。

A four-chanel digital oscilloscope, featuring a sampling rate up to 200MSps and 150MHz bandwidth, has been developed. This general purpose oscilloscope has realized extremely compact size and light weight compared with DL1200/1300, we have already released, as a result we have developed as input amplifier IC and employed a small-height power supply and a mono-cock chassis. This paper provides an overview of this new product.


  1. まえがき
  2. 特長
  3. 構成
  4. アナログ部
  5. データ処理・制御回路
    1. データ処理回路
    2. アクイジション制御回路
  6. マンマシンインターフェース部
    1. 表示制御回路
  7. 電源
  8. シャシーおよびケース
  9. ファームウェア
  10. 2ページロールモード
  11. リアルタイムプリント
  12. あとがき
  13. 参考文献

まえがき

汎用オシロスコープとして多くのお客様に使用していただいているDL1200/1300を全面的に改良しDL1540を開発した。技術の進歩とともに観測する信号もより高速化し汎用オシロスコープにも一層の広帯域化、高速サンプリングが要求されている。またモーターや自動車など測定対象が大きなものにも電子回路が搭載され測定器を測定対象近くまで持っていく必要があり小型化も同時に要求されている。 そのような要求に答えるとともに、より多くのお客様に手軽に使用していただくため高性能、低価格、小型化を追及した。 図1にDL1540の外観を示す。

特長

  1. フルレンジ4チャネル入力

  2. 最高サンプリング速度200MS/s

  3. メモリ長最大120kワード

  4. 150MHzアナログ帯域

  5. 重量約5kg

  6. 3.5インチFDD標準装備

構成

DL1540のブロック図を図2に示す。全体は、アッテネータ、プリアンプ、マルチプレクサ、A/D変換器、トリガ回路等からなるアナログ部、アクイジションメモリ、データ処理回路、アクイジション制御回路およびタイムベース等からなるデータ処理・制御部、表示制御回路、CPU、キーボード、プリンタ等からなるマンマシンインターフェース部から構成される。 アナログ回路のプリアンプはBi-CMOSプロセスを用いたモノリシックICでワンチップ化した。 ディジタル回路は、メモリ等の汎用ICを除いてCMOSゲートアレーによりASIC化した。従来機種に対し一層の集積化を進め波形の取り込みから表示までを4品種5個にまとめた。 また抵抗、コンデンサ等は極力チップ部品とし、一部ボードは両面実装によりボード枚数も17枚から6枚に削減した。 これらの高密度実装により、製品外形寸法を213mm×276mm×295mmと小型化した。

アナログ部

入力は、4チャネルすべて150MHz帯域で、最高1mV/divの感度を有している。A/D変換器は、8bits、100MS/sのものを各チャネル当たり1個、合計4個搭載した。 2チャネル使用時にはマルチプレクサ回路によりアナログ信号を分配しインターリーブ方式により200MS/sの高速サンプリングを実現した。 アンプ部はオシロスコープに要求される高インピーダンス入力を実現するためFETバッファも内蔵したワンチップICで素子約800個を集積している。ゲイン切り替えや帯域制限、DCオフセット除去等の機能を有し、帯域は約250MHzである。またトリガ信号をピックアップするために外部D/A変換器から入力されるトリガレベル中心に信号をシフトする機能、TVトリガのためのペデスタルクランプも有する。 アンプのトリガ出力は高速コンパレータに入力されロジック信号となり高速トリガロジック回路に入力される。高速トリガロジック回路はトリガ信号の切り替えやサンプリングクロックの分配、また等価サンプリング時の時間測定回路とのインターフェースの機能を有しECLゲートアレーによりASIC化した。TVトリガはHDTVにも対応した。任意の電圧範囲内に入るか否かによりトリガを発生するウィンドウトリガ機能も有する。またオプションの拡張トリガボードを搭載することにより、4チャネルいずれかがトリガ条件を満たした場合にトリガをかけるORトリガ、3nsのグリッチを検出するパルス幅トリガなどの豊富なトリガ機能を用意した。 これら信号経路の切り替え機能や前述D/A変換器を有するASICと前述した等価サンプリング時の時間測定回路はDL4080で開発したものを流用し開発期間の短縮をはかった。

データ処理・制御回路

データの取り込みから表示までのアクイジション回路およびデータ処理回路は、処理の高速化とコスト低減のため、全ての回路をCMOSゲートアレーによりASIC化し、従来機種と比べ一層の集積化を図った。通常使用時10kWのメモリ長でも波形更新速度60Hzと高速である。最大メモリ長は120kWである。
  1. データ処理回路

    アクイジションメモリへのデータ書き込みおよび、読み出したデータを加工し表示制御回路への転送処理を行う。構成はDL4080と同様にパイプラインプロセッサの形式である。主な機能は下記のとおりである。
    (1)アクイジションメモリにデータを書き込むためデータレートを25MHzにレートリデュースする。
    (2)時間軸設定にしたがったデータレートになるようデータの間引き・圧縮処理を行う。
    (3)エンベロープモードのためのデータのピーク検出を行う。
    (4)データのアベレージング、スムージング、反転処理を行う。
    (5)チャネル間演算(×、−、+)

  2. アクイジション制御回路

    時間軸設定やトリガ信号に従ってデータ処理回路、表示制御回路の動作をコントロールする。主な機能は下記のとうりである。
    (1)サンプリングクロックを分周しデータ取り込みに必要なタイミングをデータ処理回路に与える。
    (2)アクイジションメモリのアドレスを発生しデータ取り込み、表示データの転送等の動作を管理する。
    (3)トリガアドレスを計数し等価サンプリング時のデータの並び換え情報等をデータ処理回路に与える。
    (4)トリガの発生頻度を監視しオートトリガ等の制御を行う。

マンマシンインターフェース部

波形の表示、キー操作、プリンタへの印字等の制御を行う。
  1. 表示制御回路

    データ処理回路からのデータを受け表示バッファを介在しCRT表示データおよびプリンタへの記録データを生成し出力する。主な機能は下記のとおりである。
    (1)表示用波形データを生成する。
    (2)X-Y波形データを生成する。
    (3)グラフィック表示(カーソル、グリット等、文字等)と上記波形データの合成。
    (4)CRT表示の輝度を調整する。
    (5)プリンタ用記録データの生成および記録制御。

電源

当社で開発した積層型トランスを用いた薄型電源を搭載した。またアルミ基板を用いた構成によりヒートシンクが不要となり、電源部の体積が従来型の半分、重量を1.3kgから0.5kgに低減することができた。最大出力は130Wで入力はAC100V/200Vが自動切り替えとなっている。

シャシーおよびケース

シャシーの外観を 図3に示す。 シャシーはモノコック構造で軽量化と強度を低コストで実現させるため、板金加工技術を駆使して1枚のアルミ板から作っている。一体成形品のため繋ぎ目がなくインピーダンスが低くシールド効果も高まった。またケースはプラスチックとしシャシーとあわせて約1.8kgとなり従来品とくらべ大幅な軽量化を実現した。

ファームウェア

上位機種DL4080の開発に当たって採用したオブジェクト指向設計やメニュー系クラスライブラリーを継承し開発工数の短縮をはかった。機能面でも画面イメージデータの出力機能等を継承した。標準装備のFDDを使用することでPCとのデータ交換を容易に行う事ができる。またメニュー構成も選択支の多いものには全面メニューを採用するなど従来機種と比較しより一層の使いやすさを実現した。

2ページロールモード

50ms/divよりも遅い時間軸設定になると、レコーダが紙に記録するのと同じように波形を画面に表示する。DL1540では表示画面2枚分のデータをメモリに保存しているので、異常点が画面から消えてしまっても波形の取り込み停止後にレコーダのチャートを巻戻すように画面をスクロールさせることで観測することができる。

リアルタイムプリント

数Hz 以下の信号を直接内蔵の感熱プリンタに記録するレコーダ機能(リアルタイムプリント)を搭載した。上記ロールモード時に画面に表示されたイメージと同じものをプリンタに出力することが可能となった。最高チャートスピードは16.7mm/sでチャートスピードは時間軸を変更することで変える事ができる。また波形を常に100MS/sで取り込むエンベロープ機能と併用することで、従来の記録計では記録することのできなかった低速レンジでのμsオーダーのパルスのピーク電圧を正確に記録することができる。( 図4参照)

あとがき

デイジタルオシロスコープDL1540の構成、機能等についての概要をのべた。小型で高性能の特長を活かし、開発設計、生産現場からフィールドでの測定など幅広い分野で多くのお客様に使っていただける事を期待したい。 なお開発に際し、電源に関しては当社PSセンターの多大なる協力を得た。

参考文献

松倉 晋、ほか:
汎用型デジタルオシロスコープDL1200
横河技報、Vol.34 No.1、pp.57〜60(1990)

新美良久、ほか:
ロングメモリ高速ディジタルオシロ DL4080
横河技報、Vol.38 No.2、pp.67〜70(1994)


ページ先頭技術レポート選択メニューに戻る