ディジタルオシロスコープDL1540の構造設計
Construction of Digital Oscilloscope DL1540
川崎 秀樹*1 水澤 孝昭*1
金子 洋*1 新居 健二*2
*1 メジャメント事業部 技術部
*2 コンポーネント事業部 PS技術部
Abstract
小型/軽量かつ高性能なディジタルオシロスコープDL1540を開発した。本稿ではDL1540の特長の一つである小型/軽量化実現のキーポイントである電源及び機構構成について報告する。
We have developed a small size、 light weight and high performance digital oscilloscope、 DL1540. We report here its power supply、 and mechanical components which made us realize small size and light weight design of the DL1540.
- まえがき
- 機構構成
- プラスチックモールドベゼルの一体化
- 一体型メインフレーム
- 電源
- 5.1概要
- 5.2構成
- 5.3特長
- 5.4まとめ
- むすび
参考文献
汎用オシロスコープとして多くのお客様に使用していただいているDL1200/1300を全面的に改良しDL1540を開発した。技術の進歩とともに観測する信号もより高速化し汎用オシロスコープにも一層の広帯域化、高速サンプリングが要求されている。またモーターなどの動力源や自動車などの移動体のような測定対象が大きなものにも電子回路が搭載され測定器を測定対象近くまで持っていく必要があり小型化も同時に要求されている。
そのような要求に応えるとともに、より多くのお客様に手軽に使用していただくため高性能、低価格、小型化を追求した。
図1にDL1540の外観を示す。
DL1540の構造設計のポイントは、従来機種DL1000シリーズと比較し、機構部品に関してコスト(材料費、加工費)1/2、部品点数1/2、また大きさ(容積×重量)1/2の達成であり、これらの実現のためDL1200を主として従来機種の分析を特に重点的に行った。また、今回はDL4000シリーズを始め、近年続々と発売した新製品の構造設計の改善も並行して行っていたため、それぞれの発売時期に合わせて着実にステップアップするよう分析、検討を重ねてきた。
分析の結果、従来機種において最も組立工数のかかっているアセンブリはフロント周りと総合配線、総合組立であった。DL4000シリーズでは従来バラバラであった操作キーを一体構造とし、プラスチックモールド部品だけによるベゼル、パネル、一体キーの3ピース化を実現した。また、総合組立においてそのほとんどがネジ締結であった構造を溶接による固定とし、10点の部品を一体化させることも実現した。さらにDL4000シリーズ以外の機種についても改良を進めながら水平展開を行い、このようなステップアップを踏まえた上で、その集大成としてDL1540の構造設計を行った。
DL1540では目標を実現するための代表的手段として
- フロントベゼル、パネル、操作キーの一体化
- アルミ薄板板金によるメインフレームの一体化
- 積層型トランスを用いた電源の小型軽量化
が必要と判断した。
DL4000シリーズの考え方を更に飛躍し、フロントベゼル、パネル、操作キーを全て一体化することにより、DL1200と比較してフロント周りの加工工数を100%、組立工数を80%、部品点数を87%激減した。
また、メインフレームは溶接工程も省き、1枚の薄板アルミ板から一体成形をしている。同様に加工工数を90%、組立工数を100%、部品点数を97%激減した。
電源は当社で開発した積層型トランスを搭載し、アルミ基板を用いた構成によりヒートシンクが不要となり、体積を従来型の50%、重量を62%低減した。
また、搭載されている基板は極力チップ部品化し、一部両面実装により基板枚数も17枚から6枚に削減した。
以上により機構部品に関して、コスト67%削減、部品点数73%削減、また製品外形寸法を213mm×276mm×295mmとし、重量も6kgとしたため、大きさは53%削減を実現した。
フロント周りの大幅なコスト削減の手段として、フロントベゼル、パネル、操作キーの一体化を、プラスチックモールド型技術を駆使し、実現した。
樹脂流動解析のシミュレーション結果を
図2に示す。
熱可塑性樹脂の射出成形では過去の経験から操作キーのヒンジ部の薄肉部とボリュームのある本体を一体成形することは、樹脂の流動性能からキャビティ内圧力のアンバランス及びゲート配置等で非常に難しいとされ、特にDL1540のフロントベゼルでは操作キーの数が多く配置も近接しており更に難しい状態であった。そこで、樹脂流動解析でゲート配置とキャビティ内圧力を金型起工前にシミュレーションし、一体成形の可能性を確認した。
フロントベゼルの外観を
図3に示す。
従来、パネルに強度を持たせるため金属板を採用するが、今回はプラスチックモールドで同程度の強度にするため、パネル面とリブとの肉厚の関係を逆にし、パネル裏面に縦横に肉厚のリブを形成する事で強度を持たせた。
また、外側カバーは全てプラスチックモールド部品とし、カバー側への配線を無くしたことで配線作業は内器の状態だけで済み、組立性を大幅に向上した。
メインフレームの外観を
図4に示す。
メインフレームは1枚の薄板アルミ板を採用し、従来の設計と比較して40%の軽量化を実現した。薄板アルミ板のため、加工能力を大幅に削減する事が出来、遊休資産の小型プレス機を利用した曲げ加工を可能とした。
部分的に剛性の低い曲げには、リブを打ち出し、プラスチックモールドカバーなどとの組み合わせにより、トータルの剛性も高めた。
メインフレームの加工手順を
図5に示す。
42部品を1部品として、溶接工程、組立工程を省き、また曲げ行程は順送型の発想で4回の曲げのみとした。
図5左はNCTプレスにて抜いた状態、中央は3回曲げまで行った状態、右は4回目の曲げ(立ち上げ曲げのみ)を行い、最終形態とした状態である。
アルミ定尺板に一体型フレームを割り付けた状態を
図6に示す(現在は他の方法でも有効なためセット取り)。
材料費もムダを無くすため、CAD上でのシミュレーションを繰り返し、9個取りを可能とした。参考にこの一体型フレームを、従来設計方法による小部品の集合体とした場合の定尺板割り付け図を
図7に示す。また、一体型フレームと、この分割フレームの違いによるEMI(Electro Magnetic Interference)の差を比較した結果、一体型フレームの方が150〜300MHzの帯域について水平方向で3〜10dB程度シールド効果も高まった。
5.1概要
本器は、アルミ板上に両面基板を接着した通称アルミ2層基板と、当社プレーナートランス(PLT)を使用し軽量、薄型を実現した。外観を
図8に示す。
下記に一般的な入出力仕様を記す。
| 1. | 入力仕様 |
| 入力電圧 110V AC/220V AC 自動切替 |
| 周波数 50Hz/60Hz(400Hz) |
| 2. | 出力仕様 総出力 123W |
| 出力電圧 | 出力電流 | 負荷安定度 |
| 5.1V | 7A | +/−5% |
| −5.3V | 5.7A | +/−6% |
| 12V | 1.6A | +/−5% |
| 12Vur | 0.6A | 12.5〜16V |
| −12V | 0.5A | +/−5% |
| 24V | 1A | +/−6% |
| AC5V | 1mA | − |
|
| 3. | 効率 70%以上 |
| 4. |
| 取得安全規格 | CSA; | C22.2 No.234 |
| TUV; | EN60950(IEC950) |
| IEC1010 |
|
5.2構成
薄型電源(PS801A)のブロック図を
図9に示す。
- AC入力部(フェノール片面基板)
入力コネクタ、ノイズフィルタ、整流回路、平滑コンデンサ及び入力電圧切替回路からなり、低周波回路を構成する。
- DC/DCコンバータ部(アルミ2層基板)
パワーデバイス、トランス類が面実装によりフラットに配置される。高周波動作の発熱部品が凝縮されている。
- コントロール回路部(ガラエポ2層基板)
PWM制御ICとその周辺回路からなる。
- DC出力部(フェノール片面基板)
出力の平滑回路と保護回路からなり、主に低周波回路を構成する。
- アルミベース部(1.5mm厚のシャシー)
上記1から4の基板をこのシャシーに固定し全体の剛性を強化するとともに、アルミ基板に対しては、ヒートシンクの役目をする。
5.3特長
- パワー部品を表面実装化しアルミ2層基板上に配置する事により、従来のヒートシンクを伴った縦型ブロック構造から平面構造への移行を可能にした。
- PTLを使用する事により、トランスのコア面積を削減する事なく、低背化、軽量化が計れた。
- 1、2項の採用及び部品の小型化、高密度実装により、スイッチング周波数320kHzを実現した。
5.4まとめ
機能上の特性に加えて低背化、及び軽量化を図ることにより、可搬式の装置には欠かせない振動、衝撃に対する強度も増強された。EMCのノイズに関してはDL1540本体との組み合わせで規格内に納めている。
以上、DL1540の機構設計、ならびに薄型電源の概要を中心に紹介した。本製品の高機能、低価格、小型化の特長を生かし、幅広い分野で多くのお客様に使っていただけることを期待したい。
また、コンカレントエンジニアリングにより、横河メック(株)、当社青梅製造部、生産技2部、3部の関係者の協力を得、製品化できたことを感謝し謝辞にかえる。
- 金子 洋 ほか:
パーソナルディジタルオシロスコープDL1540
横河技報、Vol.39、No.3、4、pp.39〜42(1995)
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