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10ビットディジタルオシロスコープ DL4100

10bit Digital Oscilloscope DL4100

                         瀬上雅博(*1)  草柳直也(*1)
                         加藤誠児(*2)  小池克博(*2)  三宅正二(*3)

                         (*1) エレクトロニクス研究所
                         (*2) メジャメント1技部
                         (*3) メジャメント2技部

Abstract

自社開発した100Mサンプル、10ビットAD変換器を搭載した4CHディジタルオシロスコープを開発した。従来機種DL4080の特徴であるロングメモリ、高速更新レート、高機能を継承しつつ、高精度でコストパフォーマンスに優れたディジタルオシロスコープを実現した。また、高精度を生かすためのスプリット表示や海外発売を考慮した多国語HELP等の機能アップもはかった。

We developed a new digital oscilloscope. The instrument incorporates self-developed 100MS/s, 10-bit A/D converters. It is the successor to the 8-bit model DL4080 and inherits his long-memory concept, high-speed update rate and versatile functions. High precision and high cost-performance were fulfilled in this digital oscilloscope. Some of the functions were enhanced from its predecessor, such as the split-display mode to utilize high precision and multi-language help.


  1. まえがき
  2. 特長
    1. 基本性能
    2. 高速更新レート
    3. スプリット表示
    4. 多国語HELP
    5. SCSI(オプション)
    6. プリント/セーブ・オン・トリガ
  3. ハードウェア構成
    1. アナログ部
    2. 10ビットAD変換器
  4. ファームウェア
    1. スプリット表示
    2. 多国語HELP
    3. プリント/セーブ・オン・トリガ
    4. ファイルセーブ時のオートネーミング
    5. シーケンシャルストア時のタイムスタンプ機能
    6. ビットマップ出力
  5. あとがき
  6. 参考文献

まえがき

日々技術革新する電機電子産業においてディジタルオシロスコープに対するユーザの要求が「波形観測」から「波形測定」に変化している今日、ディジタルオシロスコープには、従来機種DL4080の持つロングメモリ、高速更新レート、高機能と言う特徴だけでなく、高精度と言うアイテムは必要不可欠なものになりつつある。しかし、高精度ディジタルオシロスコープはハイコストで、世の中にはまだ手軽に扱える製品は存在しなかった。 我々は100Mサンプル、10ビットAD変換器を自社開発することにより高精度、高機能にかかわらず、コストパフォーマンスに優れたディジタルオシロスコープDL4100を開発した。 図1に本器の外観を示す。

特長

  1. 基本性能

    チャネル毎に自社開発フルカスタムの100Mサンプル、10ビットのAD変換器および自社開発1チップAMPを搭載し、4CH同時100Mサンプル、150MHz帯域を実現した。直流確度はこれらのアナログASICの高精度により±1.0%を達成した。

  2. 高速更新レート

    専用パイプラインプロセッサにより、メモリ長100KW/CHの状態で高速更新レート(毎秒30回)を達成し、快適な操作環境を実現している。

  3. スプリット表示

    AD変換器の高分解能を生かして測定するためにスプリット表示(図2)を実現した。各波形を独立したスプリット画面に割り付けることで、各信号それぞれのフルスケールで測定、表示をすることができる。これにより 多チャンネル測定時にも高精度測定を可能にする。

  4. 多国語HELP

    海外での販売を考慮しDL4080より好評のオンライン日本語ヘルプの多国語化を実現した。(図3) 今回は、英語、ドイツ語を実装しており、メニューで選択可能である。

  5. SCSI(オプション)

    SCSIインターフェースを採用した。標準装備の3.5型FDDに加え、HD(ハードディスク)やMO(光磁気ディスク)を接続することが可能となり、単体(パソコンを接続すること無く)で大量の波形データ(最大2GB)等を保存することができる。

  6. プリント/セーブ・オン・トリガ

    トリガがかかるたびに信号をFDやMO、プリンタに記録する機能を追加した。この機能により信号を無人で長時間モニタすることを可能にした。

ハードウェア構成

DL4080で開発した高速パイプラインプロセッサを使用し、10ビット分解能でありながらDL4080と同等の高速信号処理を実現した。 以下に特長となるブロックの説明をする。
  1. アナログ部

    フロントエンド部/プリアンプ部/トリガ部はDL4080で用いた回路をそのまま使用し、回路の共通化および開発の短期化をはかった。AD変換部は当社エレクトロニクス研究所で独自に開発した100Mサンプル、10ビットのAD変換器を各チャネルに1個ずつ使用した。デジタル系とアナログ系のアイソレーション向上のためAD変換器まわりの電源配線をAD変換器内部の各ブロック毎にそれぞれ分離した。プリアンプ部、AD変換部をそれぞれ1チップ化したことにより、トランジスタのマッチングと熱バランスが向上しドリフトの改善が可能になった。またDL4080に比較して電圧軸分解能が4倍(8ビット→10ビット)に増えたこと、プリアンプのゲインを連続に可変でき(ギルバートセル方式)よりきめ細やかな自動校正が可能であることにより直流確度 ±1.0%を達成した。

  2. 10ビットAD変換器

    サンプリングレート100Mサンプル、分解能10ビットのモノリシックサンプリングAD変換器を開発した。 最大の特長は広帯域サンプル&ホールドを内蔵したことである。これによってAD変換器単体として500MHz以上の帯域幅が得られ、等価サンプリングにも十分対応できるようになった。AD変換の基本構成として、2ステップサブレンジング方式を用い、上位5ビットと下位6ビットからエラーコレクションされた10ビットデータを出力する。また、ディレイラインによるタイミング発生回路、およびDCリファレンス発生回路なども内蔵し、高速高精度サンプリングを実現すると共に外付け部品数を削減した。 チップはfT9GHzの高速バイポーラプロセスを用いて設計した。チップサイズは7.4mm×7.0mm、総素子数は約12,000個(内トランジスタは約7,000個)である。 設計のポイントは高速動作を実現することとローノイズなAD変換を両立させることにあった。そこで、まず広帯域のアナログ回路において、素子自身が発生する熱雑音を極力抑えるように注意深くTrサイズ他の素子値を決定した。さらに、広帯域のサンプル&ホールド回路は全て差動構成として、高速のディジタル回路で発生するスイッチングノイズなどを受けにくくした。また、レイアウト上のノイズ対策として、電源配線をブロック毎に専用化し、長距離のデジタル信号線の下にシールド層を挿入した。

ファームウェア

DL4080より採用したオブジェクト指向設計やメニュー系クラスライブラリー(C++)により開発効率が上がり、大幅な工数の削減がはかられた。今回は主に以下の機能アップを行なった。
  1. スプリット表示

  2. 多国語HELP

  3. プリント/セーブ・オン・トリガ

  4. ファイルセーブ時のオートネーミング

    ファイルセーブ時に自動でファイル名を付けることが出来る。

  5. シーケンシャルストア時のタイムスタンプ機能

    シーケンシャルストアでセーブされた時間を秒単位で表示する。

  6. ビットマップ出力

    セーブデータとして画面イメージにポストスクリプト、HPGLがあったが、新にビットマップ(TIFF/BMP)もサポートした。これによりほとんどのワープロにそのまま張り付けることが可能となり、よりいっそうレポート作成に威力を発揮する。

あとがき

ディジタルオシロスコープDL4100について機能および構成を述べた。より高速かつ複雑な電気信号を扱う製品開発においては、容易にかつ忠実に電気信号をとらえることのできる波形測定器が必要不可欠のツールとなっている。DL4100はこれらのニーズに応えるために開発されたオシロスコープである。本製品がユーザの開発効率、生産性の向上に役立つことを確信している。 最後に本製品の開発にあたり有益なご助言をいただいたエレクトロニクス研究所 通信技術Gr 阿川氏に厚く御礼申し上げる。

参考文献

新美良久、矢崎誠二、三宅正二、塚本和嘉:
``ロングメモリ高速ディジタルオシロ DL4080'',
横河技報 Vol.38,No.2,p67〜70,(1994).

千田隆之、山口和人、杉原吉信、津波古充吉:
``高帯域ゲイン可変アンプIC'',
横河技報 Vol.38,No.4,p157〜160,(1994).


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