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ディジタルパワーメータ WT110/WT130

Digital Power Meter WT110/130

                         数見 昌弘*1  川住 和雄*1  
                         平井 一夫*1  大平 栄一*2  

                         *1 メジャメント事業部 技術部
                         *2 メジャメント事業部 プロダクトマーケティング部
  

Abstract

基本特性が0.35%、測定帯域がDCおよび10Hz〜50kHzのディジタルパワーメータWT110/WT130を開発した。従来機種のModel2534及び2535の後継モデルで、WT110が単相モデル、WT130が三相モデルとなっている。市場の低価格の要求に応えながら、従来機種に比べ、サージ耐量及び耐ノイズ性の改善、機能アップ等を図っている。
ここではその概要を報告する。

We have developed sampling power meters which can measure DC signals and AC signals from 10Hz to 50kHz. WT110 is the single phase-model, and WT130 is the three phase-model. They succeed to their former Models 2534/2535 placed on the market in 1992. To satisfy the market demands, the surge resistance and noise immunity have been improved, and they have various functions. This paper describes an overview.


  1. はじめに
  2. 特長
  3. 基本構成
    3.1入力部
    3.2有効電力測定原理
    3.3その他の測定項目
  4. 機能
    4.1高調波解析と外部出力
    4.2コンパレータ機能
  5. むすび

1.はじめに

当社の標準電力変換器 Model 2885 やディジタル電力計 Model 2533 を始めとする各種電力計は世界的に使用されており、その用途も標準器から汎用ユースまで、実に幅広く利用されている。また1991年にはディジタル・サンプリング方式を初めて採用した Model 2532 を発売した。また翌年には、ディジタルサンプリングによる総和平均法を採用した汎用型の電力計 Model 2534 および 2535 を発売した。この機種は、市場の低価格要求にマッチし、特に家電市場にて高く評価された製品であったが、耐ノイズ特性を始めとする、サージ耐量の不足、機能アップなど、市場から新製品の要求が高まった。
今回開発した WT110 および WT130 は、この後継機種として測定帯域などの性能面、高調波解析などの機能面、電圧と電流間の絶縁、そして操作性など全ての面で優位性を持ったディジタル電力計である。
更に、後継機種であることから、従来機種の徹底した分析を基に設計仕様を明確にし、新機能や性能による差別化と低価格を実現している。また部品の共通化およびリユースを図りながら、企画から発売まで1年と言う短期間での開発を成し遂げた。
WT110 が単相用、 WT130 が三相用である。図1に外観図を示す(以下、WT100 シリーズと記す)。

2.特長

WT100 シリーズの主な機能と特長は次の通りである。
  1. 大型 LED ディスプレイ
    表示部の機能を全面に押し出し、見やすさと使いやすさを考慮したデザインとした。配電盤・パネル装着時には視認性が最も重要な要素の一つであることから、上位機種と同じ大型の LED ディスプレイを採用した。操作キーは他の機種との共通化を図ると共に、操作キー割付の最適化と操作性に配慮した。

  2. 小型、軽量
    従来の三相用電力計は全幅サイズであったが、可搬性を考慮し半幅サイズとした。これにより総重量を5kg以下に抑えることが可能になり、手軽に持ち運びが出来ると同時に、ラックマウントには2台並列に装着することが可能になった。

  3. サージ耐量のアップ
    従来のシャント抵抗の構造を見直し、サージ耐量に優れた板状にすると同時に、許容誤差を大きくしてトリミング行程を削除した。これにより、従来モデルに比べ、格段のサージ耐量(300Arms/20mS)を実現し、更にコストを約1/2にすることが出来た。

  4. 入力部
    モジュール間の絶縁、同一モジュール内の電圧−電流間を絶縁している。また IEC1010 に準じた2重絶縁構造となっている。

  5. 高調波解析機能(オプション)
    近年は、電源高調波規制の実施など高調波に関する市場の要求が強くなっている。本器は定常的な高調波を測定するのに適し、低価格で簡易的に測定ができるよう設計した。

  6. コンパレータ出力(オプション)
    生産・検査ラインでの GO/NO-GO 判定ができる4チャネルのリレー接点出力を設けた。このリレー接点出力にはシングルモードとデュアルモードがあり、これらを組み合わせることによって5種類の判定が可能である。また、このオプションにはDA出力も搭載されている。

  7. ユーザーによる表示値調整
    計測器を使用するユーザーにとって、ISO に基づいた計測管理が重要なテーマである。従来の電力計は、ユーザー自身が調整および校正することは困難であったが、WT100 シリーズにおいては、マニュアルおよび通信による表示値調整を可能にした。これにより維持管理費を削減できるメリットをユーザーに供給できる。

3.基本構成

WT130 の基本構成を図2に示す。全体は入力部、CPU部、表示部、I/F部、電源部で構成されている。

3.1入力部

入力部は電圧および電流回路、AD 変換器、DSP とDC/DC コンバータによる電源により構成されている。電圧回路と電流回路とはそれぞれ絶縁されている。AD変換器は12ビット/100kHz の汎用品である。DSP は従来機種と同じ16ビットの固定小数点演算の汎用品である。構造はCE マークを前提とした2重絶縁とし、3700V 以上の絶縁耐圧を有する部品を使用している。
電圧入力部は、100kΩのチップ抵抗20個で構成された2MΩの入力抵抗になっている。従来、入力部の抵抗は600V の高電圧を分圧するために、高耐電圧、高精度の抵抗を使用していたが、チップ抵抗を並べることにより1個当たりの抵抗に加わる電圧を低くし、通常のチップ抵抗を使用できるようにした。これにより部品費を従来の1/10に抑えている。また各国の安全規格にて要求される単一故障時の安全性においても、チップ抵抗1つが短絡しても、入力抵抗の変化が5%に留まり、ヒューズ等の安全対策部品を必要としない。
電流入力部は、5mΩのシャント抵抗とアンプで構成される。従来、広帯域・高精度型の電流検出用シャント抵抗は、サージ耐量が小さく焼損などの問題があった。これを解決するために抵抗体を板状とし、抵抗値を合わせるためのトリミングを省き、さらに周波数特性を向上させるために形状を工夫した。図3にシャント抵抗の電流サージ耐量特性を示す。

3.2有効電力測定原理

測定原理を以下に説明する。
サンプリングして得られた瞬時データを、ある一定区間において加算し、それをサンプル回数で除して平均化する総和平均法によって測定データを得ている。この一定区間は入力信号の周期と同期をとることによって決定される。また平均化処理は16ビットDSP により、表示更新周期の250ms 以内にリアルタイムで行っている。
DSP では有効電力、電圧及び電流実効値の演算を行っており、以下にその演算式を示す。

有効電力P
電圧実効値
電流実効値

v(k): k番目のサンプリングによる電圧瞬時値
i(k): k番目のサンプリングによる電流瞬時値
n : 整数
N : 入力の周期に同期したサンプリング回数
ここで、サンプリング回数Nは、ハードウェア上で測定有効期間を作りだし、決定している。以下に入力信号に同期して得られる測定有効期間について説明する。
図4に測定有効期間を決定する原理を示す。電流の入力波形は、ゼロクロスディテクタにより方形波のゼロクロス信号に変換される。このゼロクロス信号の立ち上がりと基本ゲートを同期させた期間が、電流信号と同期した測定有効期間である。同様のゼロクロスディテクタは電圧側にも有り、電流入力と同じ原理で電圧信号と同期した測定期間も得ている。
DPSにおいては、測定対象機器または入力条件などを考慮してサンプリング期間を変えて、常に以下の3種の測定値を得ている。
  1. 電流信号に同期して得られる測定値
  2. 電圧信号に同期して得られる測定値
  3. 固定周期内(200ms)で得られる測定値
これらの測定値は、以下の条件によっていずれかが真の測定値として選択される。

aが選択される場合

これは、通常の電力測定の場合には電流信号に同期して測定されることを意味している。

bが選択される場合

これは、例えば電圧信号だけを入力している場合などに対応している。

cが選択される場合

これは、入力信号周期が測定周波数範囲より低い場合やそれぞれの入力信号レベルが基準レベルより低い場合に対応している。

以上のように、測定期間を決定してからではなく、3通りの測定期間で演算を終了してから、最後にどの演算結果を真の演算結果とするかを決定している。これにより、どのような入力波形に対しても最適な測定期間でデータをサンプルし、かつ、入力応答時間が長くなることを防止している。

3.3その他の測定項目

DSP の演算結果を基にCPU にて、皮相電力、無効電力、力率、位相角及び積算値を演算している。積算値には電力積算値及び電流積算値があり、それぞれ正負の極性別の結果も得ることが出来る。積算値は、DSP での有効電力値及び電流値の演算結果を符号別に加算し時間換算したものである。有効測定期間の測定結果の加算のため、原理の異なる測定器の結果とは異なる場合が有る。

4.機能

4.1高調波解析と外部出力

通産省による高調波対策ガイドラインの通達等、国内でも高調波電流測定の関心が高まってきている。
本器では、低価格で付加出来る高調波解析機能オプションを用意した。本機能を実現するために付加されるハードウェアはPLL同期回路、DMAコントローラ及び32kバイトのRAMである。
PLL同期回路により、入力基本周波数を512倍したサンプリングクロックで得られた基本周波数1周期分の瞬時データは、DSPを介し、DMAコントローラによりRAMに収納される。その後、メインのCPUにより50次までのFFT解析を行っている。高調波抑制対策に必要な、含有率、歪率、各次数の基本波に対する位相角等のデータが得られる。
解析結果は通信出力をはじめ、プロッタやプリンタへ出力する事も可能である。プロッタ出力例を図5に示す。

4.2コンパレータ機能

4つのリレー接点出力は、個別に測定ファンクション、判定値が設定可能で、測定値が判定値を越えれば接点が切り替わるようになっている。これらの出力を2チャネル組み合わせる事により、上下限、上上限、下下限の判定が可能で生産・検査ラインでのGO/NO-GO 判定に有益である。

5.むすび

以上、WT100シリーズの測定原理、機能および特長などについて述べた。本器は、エアコンに代表される家電製品やOA機器などの消費電力の測定をはじめ、インバータ機器の出力測定にも一部応用できる。生産現場で必要となるコンパレータ機能や、関心の高い高調波解析など、豊富な機能を満載しており、各種用途での活用が期待できる。
このWT100シリーズを投入することにより、電力計のラインナップをより充実させることができた。今後の電力計はWTシリーズとして新製品展開を考えて行きたい。

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