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計測豆知識・技術レポート

測定器の正しい使い方入門
ディジタル・マルチメータの使い方

解説

DMMの基本構成

図15-1にDMMのブロック図を示します。
DMMのブロック図
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■ 入力部
DMMの入力部はケースや電源と絶縁されていて、フローティング入力になっています。
直流の高電圧測定では、入力電圧を抵抗で分圧した後にA-D変換を行います。
抵抗測定では、被測定抵抗に既知の電流を流してそこに発生する電圧から抵抗値を求めています。
直流電流測定では、既知の抵抗(シャント抵抗)に被測定電流を流してそこに発生する電圧から電流値を求めています。
交流電圧測定では、AC用プリアンプでノーマライズした交流信号を直流電圧に変換して求めています。
交流電流測定では、シャント抵抗で電圧に変換した後で交流電圧測定と同様にして求めています。

■ A-D変換部
多くのDMMではノイズ除去効果に優れた積分型A-D変換方式を採用しています。その代表的な例を以下に示します。

デュアル・スロープ方式
図15-2に、デュアル・スロープ方式のブロック図を示します。
デュアルスロープ方式のブロック図
被測定電圧Exが負の場合、まずスイッチS1が一定時間tsだけ閉じます。このとき、抵抗Rに流れる電流Iは、

I=Ex/R・・・・(1)
となり、すべてコンデンサCに充電されます。
ここで、ある時間tsだけ充電されたときのコンデンサCの両端の電圧をEtsとすると、Etsは次の式で表されます。
I・ts=-C・Ets
∴Ets=-I・ts/C・・・・(2)
(1)式を(2)式に代入すると、
Ets=-Ex/C・R×ts・・・・(3)
となります。
つぎにスイッチS1を開いてスイッチS2を閉じ、被測定電圧と逆極性の基準電圧Esに入力を切り替えると出力電圧Eoは次式のようになります。
Eo(t)=-Ex/C・R×ts-Es/C・R×t・・(4)
ここで出力電圧Eoがゼロになるまでの時間をtxとすると次式が導かれます。
Ex=-tx/ts・Es・・・・(5)
したがって、積分時間ts、基準電圧Esが一定であれば、被測定電圧Exは、tx(すなわちS2が閉じてから積分器出力Eoがゼロになるまでの時間)をカウンタで測定することによって求められることがわかります。
 デュアル・スロープ方式には以下の利点があります。
  1. 積分定数C、Rが含まれていないので[(5)式]、それらの変動は誤差にならない。
  2. 入力Exをtsの間積分しているので、このtsを商用電源周期の整数倍に選べば電源のハムの影響を除去することができる。
この方式は回路構成がシンプルなので、おもに3ヶ1/2桁~4ヶ1/2桁の低価格DMMに採用されています。また5ヶ1/2桁以上のベンチ・トップ・タイプDMMでは、デュアル・スロープ方式を発展させて高速化、高分解能化したマルチスロープ方式が採用されています。


帰還型パルス幅変調方式
図15-3に帰還型パルス幅変調方式のブロック図を示します。
帰還型パルス幅変調方式A-Dコンバータ
入力電圧Exは、方形波クロック電圧±Ecおよびコンパレータ出力で交互に切り換えられる基準電圧±Esとともに積分器に加えられます。
コンパレータは積分器出力Eoをゼロ・レベルと比較し、Eo>0のとき+Esが、Eo<0のとき-Esが積分器へ負帰還されるようにスイッチSを駆動します。スイッチSが+Es側または-Es側に接している期間は入力電圧の大きさによって決まり、その1周期にわたる平均値がちょうど入力電圧と打ち消し合うところで平衡状態になります。
クロック電圧±Ecはこの系を動作させ繰り返し周期Tを定めるもので、1周期の平均直流電圧はゼロ(デューティ50%)にしてあります。ここでスイッチが+Es側に接している期間をT1、-Es側に接している期間をT2とすれば、平衡状態では次式が成立します。

Ex/C・R1×T+Es/C・R2×T1-Es/C・R2×T2=0
ここでR1=R2とすれば、
Ex・T+Es・T1-Es・T2=0
∴Ex/Es=(T2-T1)/T・・・・(6)
となります。また、T1+T2=T(クロックの周期)なので、
Ex/Es=1-2×T1/T・・・・(7)
となり、T1をカウンタで測定すればExをディジタル化することができます。
この方式はデュアル・スロープ方式と同様の利点があります。さらに負帰還によってパルス幅変調が高精度化、高安定度化されるため、コンパレータのオフセットやヒステリシスなどの影響を受けません。そのためデュアル・スロープ方式にくらべ、より高分解能の測定が可能であり5ヶ1/2桁以上のベンチ・トップ・タイプDMMに採用されています。
 
■ 基準電圧および基準抵抗
DMMの確度を決めるもっとも重要な構成要素は基準電圧と基準抵抗です。
基準電圧には基準電圧用IC(ツェナ・ダイオード)が使用されていますが、これには高い長期安定度と低い温度係数が要求されます。高精度のDMMではエージングして経時変化を確認したものを使用しています。
基準抵抗の中でも抵抗比を必要とする部分には、長期安定度が高く相対温度係数の低い薄膜モジュール抵抗などが使用されています。
 
 
■ ディジタル部
ディジタル部はマイクロプロセッサやゲート・アレイなどのロジック回路で構成され、表示の制御、測定タイミングの制御、インターフェース(GP-IBまたはRS-232-C)の制御などを行っています。
ベンチ・トップ・タイプのDMMではディジタル部のコモンはケース電位であるので、入力部、A-D変換部などからはフォト・カプラで絶縁されています。
ハンドヘルド・タイプの構成は基本的にはベンチ・トップ・タイプと同じですが、電池駆動なので絶縁が不要であり、アナログ部やロジック部を1~2チップのLSIに集積して小形化、低消費電力化を図っています。