ページ内を移動するためのリンクです。
グローバルナビゲーションへ
本文へ
サイト情報へ

GLOBAL TOP

CLOSE



計測豆知識・技術レポート

測定器の正しい使い方入門
ディジタル・マルチメータの使い方

解説

測定法と使用上の注意

■ 直流電圧測定
図15-4に直流電圧測定の入力部を示します。
直流電圧測定の入力部
入力抵抗
低電圧レンジ(通常12V以下)では直接バッファ・アンプで受けるため入力抵抗は1GΩ以上ありますが、OPアンプの入力電圧範囲を越えるような高い電圧を入力した場合は、内部保護回路が働いて入力インピーダンスが低く(100kΩ程度)なってしまいます。
いっぽう高電圧レンジの入力抵抗は分圧抵抗によって決まり、10MΩ程度です。こちらは入力する電圧によって入力インピーダンスは大きく変化しません。
通常、DMMはオート・レンジ機能により最適なレンジが自動的に設定されますが、その過渡期には上記の理由により入力インピーダンスが低くなる可能性があります。
入力抵抗の値は多くの場合∞Ωとみなされますが、実際には被測定電圧の信号源抵抗Rsにより図15-5のような誤差を生じます。信号源抵抗Rsが大きい場合には、この誤差が大きくなるので注意が必要です。
入力抵抗による影響
ブートストラップ・アンプまたベンチ・トップ・タイプのDMMの中には入力バッファ部にブートストラップ・アンプ(図15-6)を採用しているものもあります。
図15-6で、たとえばツェナ電圧を15Vにした場合、OPアンプの電源電圧は出力電圧に追従して、
出力電圧±(15V-トランジスタのVBE)
になります。このブートストラップ回路により通常のOPアンプの入力(±12V程度)を越える電圧に対しても正常に動作し、たとえば±Vccを±40Vにすれば±25V近くまで、高い入力抵抗で受けることができます。


バイアス電流
入力をバッファ・アンプで受ける直流電圧レンジでは、Hi-Lo端子間をショートしてからオープンにすると表示はゼロからゆっくりと増えていきます。これはDMMの入力バイアス電流が入力容量をチャージアップしているために起こります。
高電圧レンジではHi-Lo間に分圧抵抗が入っているため、入力をオープンにしても表示はゼロになります。
 入力バイアス電流はバッファ・アンプの初段に使用している素子によって発生するものであり、周囲温度が上がるとバイアス電流も大きくなる傾向にあります。
バイアス電流の値は数十pA~数百pA程度なので多くの場合は問題になりませんが、信号源抵抗Rsに応じて図15-7のような誤差を生じます。
バイアス電流による影響
あらかじめ信号源抵抗と同じ値の抵抗をHi-Lo端子間に接続してバイアス電流による誤差分を測定し、通常の測定値からその誤差分を引くことによりバイアス電流の影響を除くことができます。このように一定の値を測定値から引いて表示する機能をNull機能といいます。


ノーマル・モード・ノイズ
DMMはさまざまなノイズ環境で使用されます。そのうち図15-8のように入力のHi-Lo端子間に加わるノイズenをノーマル・モード・ノイズといい、その成分はおもに商用電源周波数およびその高調波によって占められています。
ノーマル・モード・ノイズ
それを除去する割合をノーマル・モード除去比(Normal Mode Rejection Ratio:NMRR)といい次式で表します。
NMRR=20log×en/△en
ここでenはノイズ電圧、△enはノイズによる測定誤差です。
積分型A-D変換方式では、積分時間を商用電源周期の整数倍に選ぶことにより、図15-9に示すようにこのノイズを効果的に除去することができます。
商用電源周波数が50Hzの場合は積分時間20msが、60Hzの場合は16.7msが使用され、それらを共用にする場合は100msの積分時間が使用されます。
積分型A-Dコンバータによるノーマル・モード・ノイズの除去効果


コモン・モード・ノイズ
図15-10のように入力のHi-Lo端子に共通に加わるノイズemをコモン・モード・ノイズといい、DMMと被測定電圧のグラウンドが離れている場合や熱電対のように小さい電圧を測る場合に影響がでてきます。
コモン・モード・ノイズ
それを除去する割合をコモン・モード除去比(Common Mode Rejection Ratio:CMRR)といい次式で表します。
CMRR=20log×em/△em
ここでemはノイズ電圧、△emはノイズによる測定誤差です。
通常DMMはケースの中にそれと絶縁された内部シールドをもっています。
内部シールドがLo端子に接続されたDMMを図15-11(a)に示します。
コモン・モード・ノイズemは内部シールドとケース間のインピーダンスZとリード線抵抗r2の比で分圧され、ノーマル・モード・ノイズecmとなって測定に誤差を生じます。
したがって、インピーダンスZが大きいほどCMRRは大きくなります。積分時間をコモン・モード・ノイズemの周期の整数倍に選ぶとNMRRが大きくなる(図15-9参照)ため、結果としてさらに大きいCMRRが得られます。
通常CMRRの仕様は積分時間と周波数が規定されています(例:積分時間100ms、ノイズ周波数50、60HzでCMRRは120dB以上)。
コモン・モード・ノイズによる影響
CMRRをさらに大きくしたい場合にはガード端子の付いたDMMを使用します。これは図15-11(b)のような構造になっています。コモン・モード・ノイズemをインピーダンスZ2とリード線抵抗r3で分圧し、さらにインピーダンスZ1とリード線抵抗r2で分圧しているため、図15-11(b)よりもCMRRは大きくなります(例:積分時間100ms、ノイズ周波数50、60HzでCMRRは140dB以上)。

熱起電力
低レベルの電圧測定では熱起電力も誤差の原因となります。
異なる金属を使用して回路を接続すると金属と金属の接触する箇所で熱電対が形成され、その結果、接触点の温度により電圧が発生します。
表15-1に異なる金属を接続した場合のおよその熱起電力の値を示します。
熱起電力の発生を最小限にするためには、端子および測定対象の接続をしっかりとして温度勾配がなくクリーンな環境が必要です。
およその熱起電力


オート・ゼロ機能
DMMにおいてゼロ点の安定度は重要な特性の一つですが、プリアンプやA-Dコンバータのゼロ点は温度変化や時間経過でドリフトします。
これを補償するために最近のDMMではオート・ゼロ機能を備えています。これはプリアンプの入力にスイッチを設けて(図15-1参照)、まず入力につながるスイッチをONにして入力電圧を測定し、次にゼロ(回路コモン)につながっているスイッチをONにして内部オフセットを測定し、二つのデータの差をとってドリフトを打ち消すものです。
なお、オート・ゼロ機能をOFFにすると測定の確度は落ちますが、測定速度が約2倍になります。

■ 交流電圧測定
AC-DC変換方式
AC-DC変換には、図15-12に示すように真の実効値変換方式と平均値整流方式とがあります。
AC-DC変換
真の実効値変換では対数変換方式(Log-Antilog方式)がおもに採用されています。この方式は交流信号を整流した後、トランジスタのlog特性を利用した回路でアナログ演算を行い、定義にそった実効値に変換するものです。
平均値整流方式は交流信号を整流した後、ローパス・フィルタによって直流分を取り出します。これに正弦波の波形率(表15-2参照)を乗じて実効値換算するものです。したがって、被測定交流電圧波形が正弦波の場合は正確に測定できますが、正弦波以外の場合は波形による誤差を生じます。
ただし波形がはっきりわかっている場合は表15-2に示すように波形率、波高率(クレスト・ファクタ)が明確であり、平均値整流方式を使用したときの測定誤差を算出できます。この方式は回路がシンプルで低コストであるので、ハンドヘルド・タイプのDMMで多く使われています。


クレスト・ファクタ
真の実効値変換方式による交流電圧測定では、平均値整流方式と違い正弦波以外の波形でも正確に測定できますが、その際にクレスト・ファクタの値に注意しなければなりません。
クレスト・ファクタとは実効値とその波形のピーク値との比で定義され(表15-2参照)、クレスト・ファクタの大きい交流電圧の測定には広い入力電圧範囲をもつ実効値変換回路が必要になります。
たとえばフルスケールにおいてクレスト・ファクタ7の真の実効値測定器では、その7倍のピーク値を持つ波形の場合でも応答しなければなりません。
したがって、クレスト・ファクタが機器仕様より大きい交流電圧測定では、レンジを一つ上げて(感度を下げて)測定する必要があります。そうしなければ測定レンジの最大動作範囲をオーバしてしまい、正確な測定ができなくなります。


AC測定とAC+DC測定
AC測定は、AC結合した真の実効値を測定します。これは大きなDCオフセットが存在する中で小さなAC信号を測定する場合に用いられます。
たとえばDC電源に存在するACリップルを測定する場合などが一般的です。
AC+DC測定は、AC測定とDC測定の結果を合計してその値を算出します。したがって交流波形に直流成分が重畳しているような場合でも真の実効値が測定できます。代表的な周期波形の計算値を表15-2に示します。

入力インピーダンス
交流電圧測定の入力インピーダンスは、AC用プリアンプの入力抵抗とDMMの入力容量との並列接続になります。さらに実際の測定では接続するケーブルの容量なども追加されます。
したがって、測定交流電圧の周波数が高くなると、入力インピーダンスの低下により誤差は大きくなります。

低電圧交流測定
低電圧の交流測定(100mV以下)では外部ノイズによる影響に注意しなければなりません。
露出した測定リードがアンテナの役割を果たして電磁波が測定値に誤差を生じる場合があるので、シールド線の使用や測定系全体のシールドが必要になります。
DMMの内部ノイズも測定値に誤差を生じます。Hi-Lo端子間をショートしても内部ノイズにより測定値はゼロになりません。
しかしこれらのノイズが入力電圧レベルに依存しない場合は、図15-13に示すように入力電圧と単純加算ではなく2乗和のルートになります。したがって入力信号レベルが大きくなると、これらのノイズの影響は小さくなります。
なお、交流電圧測定の仕様にはそれを満たす入力の範囲が記されており、ゼロ入力付近での確度仕様はありません。(表15-3参照)。
交流電圧測定におけるノイズの影響
 
■ 抵抗測定
2線抵抗測定と4線抵抗測定
図15-14(a)に2線抵抗測定を示します。
この方式はHi-Lo端子間に接続された被測定抵抗に、Hi端子から既知の電流を流してそこに発生する電圧を測定するもので、ハンドヘルド・タイプのDMMで多く採用されています。しかし測定リードの抵抗分も含まれてしまうため、低抵抗の測定においては誤差が大きくなってしまいます。
Null機能が付いているDMMでは、測定リードの先をショートしてその抵抗分をあらかじめ測定し、その影響を除くことができます。
4線抵抗測定は、図15-14(b)に示すように電流端子(INPUT Hi、Lo)から既知の電流を流し、電圧端子(SENSE Hi、Lo)でそこに発生する電圧を測定するもので、ベンチ・トップ・タイプのDMMで多く採用されています。電圧端子は直流電圧測定と同様に入力抵抗が非常に大きいため(>1GΩ)測定リードの影響がありません。
抵抗測定の方法
ロー・パワー抵抗測定
たとえば図15-15のように、被測定抵抗が回路に実装されていて並列にPNジャンクションが接続されているような場合には、それをONさせないようにして抵抗を測定しなければなりません。
そのためには測定電流により抵抗の両端に発生する電圧を、PNジャンクションがONする電圧よりも低く抑えなければなりません。
温度測定用に設計された抵抗や温度係数が大きい抵抗の測定では、測定電流による発熱をなるべく抑えなければなりません。
抵抗測定の測定電流はレンジによって決められているので(表15-3参照)、測定電流を小さくしたい場合には一つ上の(高い抵抗の)レンジで測定する必要があります。これらのアプリケーションに対応するために、通常抵抗測定より測定電流を1桁小さくしたローパワー抵抗測定機能を備えたものもあります。
回路に実装されている抵抗の測定


高抵抗測定
高抵抗測定では、入力容量やケーブル容量によりRCの時定数が大きくなるためセトリング時間が長くなります。
したがって、抵抗値を正確に測定するためには十分に測定値が安定してからデータを取り込むことが必要です。
高抵抗を測定する場合、図15-16のように測定リードや取り付け具の絶縁抵抗が誤差要因になります。
この絶縁抵抗は湿度や汚れなどの影響で容易に小さくなるので、高抵抗を正確に測定するためにはクリーンな測定環境が必要です。
高抵抗測定における絶縁抵抗の影響

開放端子電圧
抵抗測定ではHi-Lo端子間に被測定抵抗を接続していないとき、そこに開放端子電圧が発生します。これは測定電流を供給する定電流源の負荷が∞Ω(開放状態)であるためです。この開放端子電圧は定電流回路によって決まり、一般の抵抗測定では数V~十数V程度です。

■ 電流測定

入力インピーダンス
DMMの電流測定において、その入力抵抗(シャント抵抗)は非常に小さく(表15-3参照)多くの場合0Ωとみなされますが、実際には図15-17のような誤差を生じます。
さらに交流電流測定の場合には、直列インダクタンスや測定対象との接続状態により誤差は入力周波数にともない大きくなります。
入力抵抗による影響(直流電流測定)

誤接続
DMMの入力端子は、Lo側は共通ですがHi側は電圧測定と電流測定とで分かれています。電圧測定と電流測定とでは入力抵抗が極端に違うので、これを誤って接続すると測定対象ばかりでなくDMM自身をも破損する恐れがあります。
測定リードを電流測定端子に接続したままで、パネル設定だけ電圧測定にして電圧測定箇所に接続してしまった場合はとくに問題です。
電源やアンプの出力など電圧測定箇所の多くは出力抵抗が小さいため、入力抵抗が小さい電流測定端子に接続すると過大電流が流れてしまいます。また測定対象が大容量電源のように過大電流を許容してしまう場合には、DMMの入力抵抗(シャント抵抗)が破損してしまいます。
通常DMMではこのような誤接続による火災や人身事故を防ぐために、図15-18に示すように電流端子にヒューズが内蔵されています。
最近のハンドヘルド・タイプのDMMでは、安全性を高めるために爆発と放電を防ぐ消孤材入りのセラミック・ヒューズや速断型高性能・高耐電流ヒューズを内蔵し、さらに電流測定端子にシャッタを付けて電流測定以外のファンクションでは開かないように工夫されたものもあります。
電流端子の過電流保護
■ 許容最大入力
図15-19に代表的なDMMの入力端子部を示します。
入力端子部には許容最大入力が示されており、それ以上の入力はDMMを破損する可能性があります。
入力端子部の表示