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交流電力の基礎知識と電力測定器の仕組み

4. 実際の計測事例でのポイント インバータ消費電力測定

インバータとは電力変換器の一つで、簡単に言うと直流を交流に変換する装置です。直流信号を交流信号に変換する場合、スイッチング回路を用いてパルス幅を変化させて出力を擬似的な交流信号を作ります。このようにパルス幅を変化させる変調方式をPWM変調方式と呼びます。図10に変調のイメージを図示します。
インバータ変調イメージ図
図10:インバータ変調イメージ図

●インバータ測定で必要な測定帯域の考え方 
インバータの用途でもっとも主流な対象はモータで、モータは抵抗とインダクタンスが直列につながった負荷です。R-L負荷の例としてR:1Ω、L:1mHに基本周波数30Hz、キャリア周波数10kHzのPWM電圧を印加した場合、R-L負荷の周波数特性、PWM電圧信号含有率と有効電力含有率のスペクトラムは図11のとおりです。
R-L負荷に高周波成分を有するPWM電圧を印加しても、高周波電流は負荷特性のためほとんど流れません。2.2項で述べたように有効電力測定には電圧あるいは電流のいずれか低い方の周波数帯域の特性をもつ測定器を使用すれば良いので、電圧PWM信号に極めて高い周波数成分が含まれていても電流信号には含まれないため、高い測定帯域が必ずしも必要とは言えません。図11の例から考えるとモータ駆動インバータの場合、ある程度の高精度測定を可能にするにはキャリア周波数の数倍までの測定帯域があればいいと言うことになります。

最新のインバータ駆動モータでは電圧測定に注意
インバータモータを試験する場合、モータの駆動特性はインバータ出力電圧の基本波実効値に左右されると考えられています。また、正弦波制御PWMの基本波実効値は平均値整流実効値校正(電圧MEAN)で得られる測定値とほぼ一致するので、インバータの電圧測定は平均値整流実効値校正で測定することが一般化しているようです。ただし近年の可変調PWM制御など正弦波PWM以外の変調信号では平均値整流実効値校正が基本波とはかけ離れた測定値となる場合があります。このようなケースでは3.4項のとおり電力計では高調波測定という機能を使えば正確な基本波測定が可能です。従来の電力計では定常的に電力を測定する場合と高調波の測定をする場合で、測定はモードを切り替える必要があったが、最新の電力計では電圧、電流、電力と、高調波測定が同時におこなえるようになっております。そのため、測定が容易になっただけでなく、電力測定値と基本波測定値の時間的同時性が保たれます。インバータ駆動回路では時間経過とともに変化する発熱が機器の特性に大きく影響するので同時にデータが取れることは大変重要であると言えます。

RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部
RL負荷 FFT結果 インピーダンス実数部

モータはR-L負荷なので周波数が高いとインピーダンスが増える


PWM FFT結果 電圧 電力含有率
PWM FFT結果 電圧 電力含有率
電力のスペクトルは基本成分に対してキャリア成分は極めて少ない
図11:PWMインバータの電圧、電力含有率とR-L負荷の周波数特性例

5. まとめ

インバータや電源などのパワーエレクトロニクスでは大電圧、大電流で駆動することが多く動作時に発熱を伴うため、回路特性の変化や配線のロスが影響することもあります。また複雑な制御回路を構成し、測定状態は時間変動とともに変化してしまうので同じ状態を保つことが大変困難になってきています。したがって、測定対象をより正確に測定するには入出力間の同時測定や各測定項目を時間的に同時に測定するという基本的な測定手段が実は極めて重要です。扱う信号のレベルや周波数に応じた最適な結線方法、測定のための条件設定などが測定器の選定以上に重要であるケースもあるので注意が必要です。