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YOKOGAWA

計測豆知識・技術レポート

測定器の正しい使い方入門 信号発生器の使い方
DDS方式のファンクション・ジェネレータ

解説

使用上の注意点

出力インピーダンスが50Ω

これは、アナログ/ディジタル方式に関係ありませんが、ファンクション・ジェネレータは標準交流発生器や
電源装置などと違い、低周波から高周波まで扱うために通常出力インピーダンスは50Ωとなっています。
これは50Ωの同軸ケーブルを接続することを前提に、負荷によらず波形品位を保つために負荷側から反射
してきた電圧を吸収するためです。
図7‐16に出力インピーダンスが0Ωの時と50Ωの時の方形波の立ち上がり波形を示します。

出力インピーダンスの影響
2チャネル・ファンクション・ジェネレータの片方のチャネルの出力抵抗50Ωをショートし、出力インピーダンスを0Ωとした。これに、両チャネルとも50Ω同軸ケーブル3mを接続し、ディジタル・オシロスコープ(入力インピーダンス1MΩ)で方形波の立ち上がり部分を測定した。(上:出力インピーダンス0Ω、下:出力インピーダンス50Ω)



出力電圧の定義

これも、アナログ/ディジタル方式は関係ありませんが、ディジタル方式では設定値が直読できるためにとくに注意が必要です。
メーカや機種によって、負荷がハイ・インピーダンスの時あるいは50Ω負荷の時の振幅やオフセット電圧が定義されています。
たとえぱ、ハイ・インピーダンス負荷で定義されたファンクション・ジェネレータで50Ω負荷の場合、実際に負荷にかかる電圧は設定電圧の1/2となります。
逆に、50Ωで定義されたものではハイ・インピーダンス負荷の場合、2倍となります。
しかし最近のディジタル方式のファンクション・ジェネレータでは、50Ω/ハイ・インピーダンス負荷の切り替えや、600Ω負荷やアッテネータ、アンプなどにも対応するため、スケーリング・ファクタとしての変換定数をもち、出力値に換算した振幅やオフセット電圧を表示できる機種があります。
図7‐17にスケーリング機能を示します。

スケーリング機能の使い方


スケーリング機能を使うとハードウエアの設定値Vsetにスケーリング・ファクタを乗算して本体表示器に表示する。たとえば、負荷インピーダンスが600Ωの場合、負荷インピーダンス両端の電圧Voutは、
式
となる。したがって、スケーリング・ファクタとして0.923を設定すれば、ファンクション・ジェネレータで設定した値がそのまま出力値となる。



小振幅信号が必要なとき

これもアナログ/ディジタル方式には関係ありませんが、小振幅信号を扱うとき、高いS/N比を得るためには本体だけで振幅を設定するのではなく、外部にアッテネータを接続します。
市販の50Ω系の20dBアッテネータを接続すれぱ振幅、オフセット電圧は1/10となります。
図7‐18に接続の方法を示します。
小振幅信号を扱うときはアッテネータを接続する


大振幅信号が必要なとき

汎用のファンクション・ジェネレータでは、出力電圧20Vp-p、電流100mA程度の製品が多いようです。
より大きな電圧や電流が必要なときには、外付けのアンプと組み合わせて使用します。
写真7-5にそのシステムを示します。この例では全周波数範囲で最大電圧150Vp-p、電流2Aまで使用
可能となります。
また、このような場合も前述のスケーリング機能を使用するとファンクション・ジェネレータで設定電圧が直読
できます。



トリガ・ジッタ

ディジタル方式ファンクション・ジェネレータの最大の欠点として、トリガ・モードのとき、トリガ信号と内部のサンプリング・クロックで同期を取るため、トリガ信号と出力の間に1クロックのジッタが発生するということがありました。
汎用の信号発生器では、基準クロックの周期が100ns程度なので、高い周波数では注意が必要です(100kHzで1%程度)。
従来は、この現象を防ぐためにトリガ・モードのときに、アナログ方式に切り替えるなどの対策がとられていましたが、当然周波数確度が悪くなってしまいます。
しかし、図7-19、図7-20に示すように最近のファンクション・ジェネレータではトリガ信号を受けると内部の
基準クロックの位相を強制的にトリガ信号に合わせ、トリガ・ジッタを低減する方法が採用されています。

トリガ・ジッタ低減回路
  トリガ同期回路はトリガ信号により基準クロックと同期をとり、
  波形出力のスタートを行う。


TRIG信号と基準CLKは非同期関係にあるので、従来の同期回路ではOUTに信号がでるのは次のCLKからとなり、TRIGとOUT間の遅延は不定となる。最大で1CLK分のジッタが発生する。
TRIG信号により基準CLKの位相を強制的に変えてTRIGとOUT間の位相を一定にしている。

ディジタル・ファンクション・ジェネレータのトリガ・ジッタ
ディジタル・ファンクション・ジェネレータのトリガ・ジッタ


波形ジッタ

ランプ波やパルス波のように、メモリの内容が急激に変化する部分がある場合、これもトリガ・ジッタと同様に
DDSシステムの欠点であるクロックによるジッタが発生します。
2チヤネルの出力をもったファンクション・ジェネレータにおいては、図7-21のように片方のチャネルの信号を
トリガ入力とし、別のチャネルをトリガ・モードで使用すれぱ、これも低減することができます。
波形ジッタの減少方法


方形波とパルス波
ほとんどのディジタル方式ファンクション・ジェネレータは、方形波とパルス波という似たような波形モードを
もっています。また設定により自動で切り替わる製品もあります。
図7-22は周波数軸でいろいろな解析ができるタイム・インターバル・アナライザで、ファンクション・ジェネレータの出力を測定した結果です。
高い周波数では方形波の方が、低い周波数ではパルス波の方がジッタが少なくなります。
方形波とパルス波のジッタ測定
方形波とパルス波のジッタ測定

拡大


ひずみ率

ディジタル方式ファンクション・ジェネレータにおいては、ひずみ率はほとんどD-Aコンバータの性能に依存
します。
汎用のファンクション・ジェネレータでは、12ビットのD-Aコンバータを使用している製品が多いようです。
このD-Aコンバータには微分直線性や積分直線性などの項目にランクがあり、最高の性能をもったD-A
コンバータを使用すると全高調波ひずみ率は実力値で0.02%程度と、汎用のCR発振器にくらべ遜色のない小さな値となります。
さらに、三角波のリニアリティや2チヤネル・モデルの場合のオフセット位相確度などの特性も良くなります。


位相連続
DDS方式のファンクション・ジェネレータでは原理的に出力周波数の位相連続(周波数を変えたとき位相が
連続する)が可能になります。
しかし、多チャネル・モデルでチャネル間の位相を合わせるためには、周波数を変更するたびにクロックを
止め、ディジタル演算器の内容をリセットする作業が必要になります。
したがって、この場合には位相連続が保てなくなります。
これらに対応するため、位相連続、チャネル間同期のどちらを優先するかの切り替えモードをもつファンクション・ジェネレータがでてきています。


さいごに
ディジタル方式のファンクション・ジェネレータは、非常に汎用性が高く、確度、安定度、使いやすさ、コスト・
パフォーマンスなどで、アナログ方式とは比較にならないほどすばらしい信号発生器です。



参考文献

  1. FG120/FG110シンセサイズドファンクションジェネレータユーザーズマニュアル、
    初版、IM7060ll-01J、横河電機
  2. 電子計測器ガイドブック’92年版、社団法人 日本電子機械工業会編、
    第1版、電波新聞社
  3. 稲葉 保:ダイレクト・ディジタル・シンセサイザの研究、
    トランジスタ技術、1993年2月、pp.295~303、CQ出版⑭