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YOKOGAWA

計測豆知識・技術レポート

測定器の正しい使い方入門 時間測定器の使い方

解説

カウンタの確度と分解能

エレクトロニック・カウンタは非常に高精度で測定ができるだけに、その測定値にはさまざまな要因の誤差が
含まれ、測定確度や分解能の表現を複雑にしています。


■ 測定確度を決める誤差要因

誤差要因には次のようなものがあります。
  1. ±1カウント・エラー
  2. トリガ・エラー
  3. トリガ・レベル・タイミング・エラー
  4. チャネル間エラー
測定値の誤差は、これらのエラーが足し合わさったものです。±1カウント・エラー、トリガ・エラーは分解能を決定する要因で測定値のばらつきになって現れます。
また、タイムベース・エラー、トリガ・レベル・タイミング・エラー、チャネル間エラーはシステマティックなエラーで確度のみに影響し、測定値の真値からのずれとなって現れます。これらの関係を図14-7に示します。
測定値の誤差(分解能と態度)
また、これら誤差要因は測定ファンクションによって、影響するものとしないものとに分けられます(表14-1)。たとえば、測定周期では±1カウント・エラー、トリガ・エラー、タイムベース・エラーのみが影響して測定誤差となって現れますが、チャネル間エラーはタイム・インターバル測定の時だけ意味があります。 分解能を決める
ランダムなエラーはサンプルをたくさん取って平均化することでその影響は低減できますが、システマティックなエラーは平均化しても低減することはできません。これはキャリブレーションを実行することで取り除くことが可能です。 以下、それぞれの誤差について簡単に説明します。
測定ファンクションと誤差要因

■ 分解能を決める誤差要因
±1カウント・エラー
時間を測定するカウンタ内部のクロックと入力信号はまったく非同期であるため、両者のタイミングにより
±1クロック分の量子化誤差が発生してしまいます(図14-8)。これを±1カウント・エラーと呼び、製品の中の
仕様では「単発時間分解能」がこれに相当します。
カウントエラー

前述のような補間のテクニックを使って±1カウント・エラーを非常に小さくできるようになったカウンタでは、
カウンタ内部で発生するノイズのほうが大きくなって、実際に測定される分解能がばらついてしまうことがあります。このような場合、しばしば標準偏差を用いて単発時間分解能にすることがあります。

±10ps rms

のような表現は標準偏差を表します。(図14-9)
標準偏差で表現された分解能

トリガ・エラー
電圧ノイズが時間誤差に変換されるもので、図14-10のように入力信号にノイズが重畳していたり、低周波の正弦波など信号の立ち上がりが遅い信号では、ノイズによってトリガ・レベルを横切るタイミングが測定ごとに変わってしまします。
このばらつきが測定誤差になり、トリガ・エラーと呼ばれます。
トリガ・エラーは、ノイズの大きさと信号の立ち上がり時間から表現され、その関係は信号の
SR(スルーレート)=v/tを用いて、

トリガ・エラー[sec]=信号ノイズ/SR[V/sec] [V]・・・(1)

で表されます。ノイズが小さく、SRが大きいほどエラーが小さいことを示します。
信号ノイズは入力される信号自体がもっているノイズとカウンタの内部で重畳されるノイズがあります。
トリガ・エラー


■ 確度のみに影響する要因

タイムベース・エラー
カウンタで測定する周波数や時間は、内部水晶発振器の周波数を基準に求められます。水晶発振器はそれが温度コントロールされた高安定な発振器でもエージング特性(経年変化)をもち、周波数は年月が経つにつれて変化してしまいます。(図14-11)
たとえば、

エージング・レート=±2×10-8/年

で発振周波数10MHzの水晶発振器は、その周波数が1年後には、最大±0.2Hz変化している可能性があります。このように基準周波数がずれることによって生ずる誤差をタイムベース・エラーと呼びます。
タイムベース・エラーを取り除くには定期的に発振器の周波数を調整する必要があります。あるいは、カウンタのほとんどは図14-1でもわかるように、外部基準入力端子(EXT REF IN)をもっており、内部クロック以外のタイムベースで動作できます。外部基準信号端子にCs原子標準器などをつなげばタイムベース・エラーは取り除くことができます。
水晶発信器のエージング特性(経年変化)

トリガ・レベル・タイミング・エラー
タイム・インターバル、パルス幅測定のときに発生する測定誤差で、測定確度のみに影響を与えます。
入力コンパレータにはヒステリシスがあるため、設定したトリガ電圧と実際の電圧とは異なります。
そのためスタートとストップのスロープが違うと、その差が誤差となって現れます。

■ チャネル間エラー

文字どおりA、B入力のカウンタ内部でのチャネル間スキューによる誤差で、タイム・インターバル測定の場合のみ確度に影響を与えます。分解能が高いカウンタでは無視できません。


■ ゲート時間と周波数分解能

レシプロカル方式のカウンタでは、ゲートをかけて周波数測定を行うと、その分解能はゲート時間内の入力
周期数で平均化され、±1カウント・エラー、トリガ・エラーは低減することができます。
つまり、ゲート時間を長くすれば分解能が上がり周波数分解能は(2)式のように表されます。

周波数分解能=±1カウント・エラー±トリガ゙・エラー/ゲート時間×測定周波数・・(2)
かけ算左側の分数が有効桁数を表し、これに測定した周波数を掛けることで最小有効桁つまり分解能が表されます。±1カウント・エラーとトリガ・エラーが小さく、ゲート時間が長いほど分解能が向上することになります。
ここで、具体的な数字を用いて考えてみましょう。


■ 正弦波の周波数分解能

以下のような条件で正弦波信号の測定分解能をその周波数を横軸に、ゲート時間をパラメータにしてグラフにしてみます。

単発時間分解能:10ns
信号ノイズ  :600μV
ゲート時間  :10ms、100ms、1sec、10sec
入力信号振幅 :2Vp-p
周波数分解能は図14-12のようになります。 ゲート時間によって分解能が1桁ずつ変わり、4本の右上がりのグラフが見られます。 測定周波数が高いとその周波数に応じて分解能は変化します。
たとえば、周波数200kHz(図中A点)の分解能は
ゲート時間:10ms →200mHz
ゲート時間:100ms→20mHz
になることが読み取れます。
測定周波数が低くなると、トリガ・エラーのために周波数が変化しても分解能は変わらず、グラフは平らになります。ゲート時間100msの測定で、周波数2kHzの分解能は(B点)0.2mHzではなく1.6mHzになってしまします。
図でさらに周波数が小さくなって、
測定周期≧ゲート時間
になるとると(C点)、分解能は設定ゲート時間にはよらず、入力信号の1周期時間になります。
このようなグラフを利用して、測定に必要な分解能の目安をつけて下さい。
正弦波信号の周波数分解能